溝口徹の栄養療法ブログ DOCTOR BLOG

2023.11.28

ビタミンDとガンと前駆体で摂取する重要性。

少し前にYahooニュースに取り上げられていた「消化器がん」の再発死亡リスク、ビタミンDサプリメント摂取で73%減少というニュース。変異頻度の多いp53抗体が過剰発現したグループへビタミンDサプリメントを使用したところプラセボと比較しがんの再発死亡リスクが73%低くなっていることが判明したという内容だ。

https://news.yahoo.co.jp/articles/147e8fb8670a404459adcd1686e2fcb8e00ee59f

コロナを機に免疫に対するビタミンDの働きが注目され、最近ではビタミンDの持つ可能性について研究が進んでいます。そんなビタミンDの歴史の始まりはさかのぼること19世紀後半。当時、流行したくる病がきっかけでした。

くる病はビタミンD不足が原因で起こる小児の骨の病気で、小児期の病態を「くる病(rickets)」、骨端線閉鎖が完了した後の病態を「骨軟化症(osteomalacia)」と呼びます。語源はギリシャ語の背骨を意味する rhakhis に由来していると言われています。くる病は19世紀後半から20世紀初頭にかけ、工業化がすすみ煤煙に汚染された北ヨーロッパや北アメリカで流行しました。当時はまだ、骨代謝に関係している事は知られていなかったのですが、民間療法として魚の肝油や太陽光照射が用いられていた記録があります、昔の人は知っていたのですね。
またビタミンDの構造はステロイドホルモンの一種に似ており体内で合成されたビタミンDの受容体が細胞の核内に存在します。ビタミンDはステロイド様の働きをする為、遺伝子の働きを調整する働きもあるので、遺伝子の変異によって引き起こされるガンに有効なのではないかと注目されています。実際に、特定のガンに対して有効であるエビデンスが集積されてきました。

ビタミンD3といえば骨粗鬆症の治療薬が有名ですが、お薬で使用しているビタミンD3の種類は一番活性の強いビタミンD3(1,25-(OH)2-D3)に似たものを使用します。そのため後述する副作用に注意する必要があります。ビタミンD3の働きを安全に得るには、前駆物質の25-(OH)-D3の血中濃度を適切な数値に保つ事が重要です。そして一番活性の強い1,25-(OH)2-D3のビタミンD血中濃度は過不足を反映しないのです。どんなに薬剤のビタミンD製剤を服用していてもビタミンDの血中濃度を評価する項目に変化は起きないのです。
さらにビタミンD製剤の副作用として高カルシウム血症がありますが、一番活性の強い1,25-(OH)2-D3が過剰になる事で起きます。本来の体のメカニズムとしては前駆物質の25-(OH)-D3から必要量を体内で1,25-(OH)2-D3に代謝するので過剰症の症状は起きません。ビタミンD3を豊富に含む魚の内臓のビタミンD3は前駆物質の25-(OH)-D3で存在しています。しいたけなどの植物性のビタミンD2は体内の中でビタミンD3に変換しその後、一番活性の強い1,25-(OH)2-D3に必要量代謝されていきます。
前駆体の形で摂取する事は、必要な組織や細胞に運搬されその場で必要な量だけが活性化されるため、副作用を心配することなく摂取することができるのです。
今回のガンへの働きも前駆物質で摂取する事が重要なポイントとなってきます。
治療レベルで栄養素を使っていくと、通常の推奨されている量をはるかに超えて摂取するので特に、脂溶性のビタミンは過剰症を心配される方が多いのですが、過剰症が問題になっているのはどの脂溶性ビタミンも一番活性の強い形に対してのものです。
脂溶性のビタミンに限らずですが、栄養をサプリメントで摂取する時は、食事をするのと同様に食品と同じ吸収経路で吸収されるという事が大前提大原則になってきます。
この原則を守ると活性の強い形で栄養を摂取するという事は選択の中に入ってきません。反対にこの大前提大原則を破ると過剰症が起きる可能性があるのです。

これからますます栄養の力が注目される時代になってきます。
正しい知識を持って色々な情報に惑わされないようにしておきましょう。

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