気管支喘息にたいする一般的な治療法では、ロイコトリエン阻害薬に分類される抗アレルギー剤、さらに最近では発作の予防のために吸入ステロイド薬が用いられています。
オーソモレキュラー栄養療法では、これらの薬の作用を補助することによってスムーズな減薬が可能になり、コントロール良好になることによって断薬が可能になることも多くあります。
栄養療法では、喘息に限らずアレルギー性疾患では粘膜の改善が優先されます。
粘膜の機能やアレルギー反応の正常化には、ビタミンDが重要であり血中濃度を適正に維持することが優先されます。
ビタミンDはカルシウム代謝に関与し骨を丈夫にしたりする作用がしられていました。
そのため、ビタミンDの血中濃度は骨代謝の改善を目的に設定されていますが、粘膜の機能を向上し免疫を調節するためには、骨代謝を維持する血中濃度よりも高い濃度が必要であることが知られているため、喘息のオーソモレキュラー栄養療法では至適濃度を設定しています。
気管支喘息では、吸入ステロイド薬が使用されますが、それは気管支粘膜における慢性の炎症が喘息の症状と関係しているためです。
炎症の慢性化には、血液中の脂肪酸バランスの乱れが関係しています。
そのため喘息の治療を希望される場合には、血液検査において血液中の脂肪酸バランスを測定し食事の変更やサプリメントを用いて適正化することを行います。
脂肪酸はω3系のαリノレン酸やEPAが重要で、ω6系ではリノール酸やアラキドン酸を減らし、γリノレン酸を増やす工夫が必要になります。
オーソモレキュラー栄養療法によって気管支喘息の治療を行うことは、喘息だけでなく花粉症などのアレルギー疾患の改善にもつながり、さらに気管支粘膜が丈夫になることによって、風邪などの感染症の予防にもつながります。
参考文献
The role of nutrition in asthma prevention and treatment
Nutrition Reviews, Volume 78, Issue 11, November 2020,
The Role of Diet and Nutrition in Allergic Diseases
Nutrients 2023, 15(17), 3683
初回基本プラン |
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52,800円 初回基本プランに含まれるもの ・詳細な血液検査+栄養解析レポート ・診察料 5回分 |
※追加検査が発生する場合があります。追加検査の料金の詳細などは診療料金をご覧ください。
月々のサプリ代 |
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3万円~6万円 |
喘息は何らかの原因で気道に炎症が起こり、気道が狭くなり呼吸が苦しくなる病気です。
日本では子供の8~14%、大人では9~10%が喘息だといわれています。
喘息は、小児では最も多くみられる慢性疾患の1つですが、大人でも発症する可能性があり、成人発症喘息は成人喘息全体の70~80%を占めるというデータもあり、高齢になってからでも発症する可能性があります。
小児で発症した喘息は、成人になってからも続くこともありますが、大部分の小児では最終的に治る可能性があります。ときに、喘息だと思われていた小児が、実は同様の症状を引き起こす別の病気であったことが後から判明することがあります。
ここ数十年で、喘息は非常に増えています。なぜ増えたのかについては、まだ分かっていません。
米国では8.5%を超える小児が喘息と診断されており、これは過去数十年と比較すると100%以上の増加です。
都市部の小児では発生率が25~40%に跳ね上がることもあります。
喘息は小児が入院する主な原因で、また学校を欠席する原因の中で最も多い慢性疾患です。
喘息発作の頻度や重症度は様々で、日常での症状はほとんどなく、たまに短時間の軽い息切れがみられるだけの場合もあります。また、日常的に咳や喘鳴がみられ、ウィルス感染、運動、その他の誘因にさらされると、重度の発作を起こす方もいます。
喘息の発作は、予防薬の効果が薄れ、気道狭窄を抑える能力が最も弱まる早朝に、最もよく発生し、喘鳴、咳、息切れなどを伴って突然始まることがあります。
また、発作がゆっくりと始まって症状が徐々に悪化していくこともあります。
喘息発作は数分で治まることもあれば、数時間から数日間続くこともあります。
特に小児では、初期症状として胸や首に痒みが現れることがあります。また夜間や運動中に乾いた咳がでるだけの場合もあります。
息をつく間もないほどの激しい咳が続き、症状がひどい場合、呼吸困難をともなうこともあります。咳は就寝中の夜間や早朝に出ることが多く、逆に昼間は発作が起こりにくい傾向にあります。また、時間帯だけでなく季節によっても発作の頻度に違いがでます。
特に朝晩の寒暖差が大きい春先や秋口といった季節の変わり目は喘息の発作が起こりやすいといわれています。
咳とともに、無色で粘り気のある痰が出始めます。粘り気の強い痰は喉の奥に絡まりやすく、不快な状態が続く可能性があります。
喘鳴とは、呼吸をするたびに喉からゼーゼー、ヒューヒューという音が鳴る状態のことです。
炎症によって気道が狭くなっているときに起こる症状で、喘鳴の場合は息を吐くときに音が鳴るケースが多いようです。気道が狭い=呼吸が苦しくなっている証拠ですので、酸素投与などで症状を落ち着かせる必要があります。
喘息の発作が起こると、激しい咳が出るのに加えて、気道が狭くなっているため、胸苦しさを感じます。
気道に炎症が起こっている状態で身体を動かすと、短時間でも息切れや息苦しさを覚えることがあります。
以前まで何ともなかった行動で息切れ、息苦しさを感じるようになったら、喘息発作が起きている可能性があります。
激しい咳が続くと、うまく酸素を取り込めず、呼吸困難を起こすことがあります。症状が落ち着かない場合は救急外来を受診し、然るべき処置を受ける必要があります。なお、呼吸が減弱しているときや、血中の酸素濃度が低下して唇や指先が青白くなるチアノーゼがみられる場合には、直ちに救急車を呼びましょう。
喘息の原因ははっきりとは不明ですが、多くの遺伝子、環境条件、栄養状態の間の複雑な相互作用に由来する可能性が高いと考えられています。
妊娠中、周産期および乳児期の環境条件は、小児期とその後の成人期における喘息の発症と関連しています。
リスクが高いと考えられるのは、母親が若年で妊娠したケースや、妊娠中に栄養不良であったケースです。
早産、低出生体重、非母乳哺育児の場合にもリスクが高くなるようです。
家庭内のアレルゲン(チリダニ、ゴキブリ、ペットの毛など)やその他の環境アレルゲンへの曝露などの環境条件も、年長児や成人の喘息の発症に関連付けられています。
ビタミンCやE、ω3脂肪酸が少ない食事や肥満も喘息に関連しています。
アレルゲンとなるもの
ダニ、ハウスダスト、ペット、花粉、食物
アレルゲン以外誘因
運動、たばこ、過労ストレス、風邪などの感染症、大気汚染、天候・気温の変化、香水などの匂い
アスピリン喘息
アスピリンを代表とする多くの鎮痛剤によって発作が誘発される喘息を「アスピリン喘息」といいます。
喘息発作前に鼻水、眼の結膜充血を伴うこともあるため、即時型アレルギーに似ていますが、IgE抗体化が低いことからアレルギーとは異なる仕組みで起きていると考えられています。なお、ときに意識障害を伴うほどの大発作になり、死に至ることも。
成人喘息の約1割を占めるといわれており、男性よりも女性のほうが発症しやすく、その多くは20~50代です。
内服薬や注射だけではなく、座薬、湿布薬でも発作を誘発するので注意が必要です。
咳喘息
喘鳴や呼吸困難がなく、咳だけが慢性的に続く病気です。正式な喘息ではなく、喘息の前段階の症状と言われています。
アレルギー素因のある人に多く、特に女性に多くみられ、再発を繰り返す傾向にあります。
その原因は不明ですが、季節の変わり目、寒暖差、煙草の煙(副流煙)、会話、運動、花粉、黄砂といったものが悪化因子です。
気管支拡張薬により咳が改善するかどうかは診断の手がかりになります。
運動誘発喘息
運動をして起こる発作のこと。通常、運動を始めて数分で起き、運動を中止すると30分ほどで回復します。
運動の種類、持続時間、気温と湿度などによっても違いますが、運動誘発喘息が起こりやすいのは、気道が過敏になっているとき、喘息のコントロールができていないときです。
激しい運動や長時間の運動などに起こりやすいといわれています。
喘息を診断するうえで、最も重要なものとなります。
喘息の確定診断、重症度の判定、ほかの病気との鑑別のためにさまざまな検査が行われます。
好酸球数、総IgE値、抗原特異的IgE抗体、アレルギー検査など
呼吸機能検査
喘息の方は健康な人よりせまく、空気が通りにくい状態です。呼吸機能検査では、スパイロメータという機器を使って、気道がどのくらいせまくなっているのかを数値やグラフで表すことができます。
気道可逆性テスト
気道を広げる「短時間作用性β2刺激薬」を吸入する前後で呼吸機能検査を行い、吸入した後のほうが気道が広がるか(可逆性があるか)を調べます。気道の可逆性は喘息の特徴なので、喘息の診断やほかの病気との鑑別のために行われます。
呼吸抵抗測定
気道の抵抗を調べます。呼吸機能検査では検出できないような細い気道の抵抗を検出できると期待されています。
喀痰検査
痰の中に好酸球や気管支の上皮細胞が増加しているか調べます。炎症が起こっていると好酸球が増加したり、気管支の細胞がはがれて痰の中に見られるようになります。
呼気NO検査
NO(一酸化窒素)は好酸球による炎症があると体の中で多く作られます。そのため吐く息に含まれるNOの量を測ることで、気道に起きている炎症の状態が数値で分かります。この数値が高いと、気道に好酸球性の炎症が生じていることを示します。
気道過敏性テスト
気道を刺激する薬剤を吸った時に、気道が反応してせまくなるかを調べます。気道が過敏で、少量の薬剤でも気道がせまくなる場合、喘息の可能性が高いことになります。また、喘息の重症度の把握や、治療が十分かどうか、本当に喘息がよくなっているのかを確認するために行われます。
胸部X線撮影
肺のレントゲンを撮影し、喘息以外の肺の病気がないかを確認します。
高解像度肺CT
中高齢の方はとくに喘息以外の肺合併症、たとえばCOPDや気管支拡張症、肺炎、気管支炎などがある場合が少なくありません。CTはレントゲンでは確認しづらい肺病変を正確に同定するために必要な検査です。
精密肺機能
とくに肺拡散能検査は、COPDとの鑑別に有用です。
心電図検査
ほかの病気との鑑別のために行われることがあります。
風邪、インフルエンザ、百日咳、マイコプラズマなど、感染症によっても発作性の咳がでます。
感染症による炎症がきっかけとなり、喘息を発症することもあります。
また、さらに長く続く症状が結核や癌であることもあります。
咳や痰が続く主な病気
百日咳、マイコプラズマ、結核、急性気管支炎、副鼻腔気管支症候群(SBS)、アトピー性咳嗽、胃食道逆流症(GERD)、後鼻漏、心因性咳嗽、肺癌
呼吸困難を伴う主な病気
肺水腫、COPD、過換気症候群
喘息と合併しやすい病気
花粉症などアレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎、好酸球性副鼻腔炎、好酸球性中耳炎、好酸球性多発血管炎肉芽腫症(EGPA)、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)
喘息の治療には、大きく分けて3つあります。「喘息発作を治す治療薬(リリーバー)」「長期管理薬(コントローラー)」そして、ダニやホコリを減らす「環境整備」です。
小児期を過ぎると喘息は治ることが多いですが、喘鳴が成人期まで持続するか、喘息が後にぶり返すことがあります。女性であること、喫煙、低い発症年齢、チリダニのアレルギーは、喘息が持続または再発するリスクを高めます。
重度の喘息発作によって死に至ることもありますが、これらのほとんどは治療で予防することができます。したがって、十分な治療を受けることができ、服薬スケジュールを遵守していれば予後は良好です。
小児の喘息の多くは、成長とともになくなります。しかし、患児4人のうち1人では、発作が続いたり、症状が治ったと思っても大きくなってからまた現れたり(再発)します。
症状が重い小児は成人になっても喘息が続く傾向があります。喘息が持続したり再発したりするその他の因子としては、女性、喫煙、幼い時期の発症、チリダニへの過敏などがあります。
毎年、多くの患者が喘息で亡くなっていますが、そのほとんどは治療をすれば防げたはずのものです。
そのため、喘息であっても治療を受けることができ、計画通りに治療を続けられる小児の予後は良好です。
医療法人 回生會 理事長
みぞぐちクリニック 院長