溝口徹の栄養療法ブログ DOCTOR BLOG

2022.07.09

グルテンフリーの重要性②

前回に続きグルテンフリーお勧めする理由についてお話したいと思います。

クリニックではどの患者さんにもグルテンフリーカゼインフリーを意識してもらうようにお伝えしているのですが「パンをやめるのは難しい」「食べないなんてちょっと考えられない」「麺が大好きで。。。」という言葉をいただく事があります。

糖質よりの食生活をされてきている方の中には白米大好きな方もいらっしゃるのですがパンや麺好きいわゆる小麦粉製品が大好きな方の方がグルテンフリーに抵抗を感じる方が多くいらっしゃいます。何故、小麦製品が好きな人に多く起きるでしょうか、それはグルテンやカゼインにはモルヒネ似たアミノ酸配列をしていて中毒性があるからなのです。単純に美味しくて病みつきになるという事ではなく薬物のような依存性が起きているのです。

私達の身体は取り入れたタンパク質を一度アミノ酸の段階まで分解するのですがその様々なアミノ酸の配列を色んな物質として認識してその物質に対して身体が反応する為、グルテンやカゼインのアミノ酸配列をモルヒネのアミノ酸配列と勘違いして体が認識しモルヒネやアヘンを摂取した時と同じような反応をする事が分かっています。

カゼインとグルテンのグリアジンのアミノ酸配列をみてみると「トリプトファン」「フェニルアラニン」などの間に「プロリン」というアミノ酸が並んでいて、この配列がモルヒネにそっくりなのです。

モルヒネとはアヘンに含まれる最も作用の強い物質で麻薬性鎮痛薬です。
アヘン?と思う方が多いのはないでしょうか、そうです、モルヒネは覚せい剤と同じアヘンが原料です。イメージの通り依存性が極めて高く、法律で使用、所持、製造に対し厳しい規制が設けられている非常に取り扱いに気を付けなければいけない成分です。

しかもその成分は脳の関所といわれている血液脳関門を通過してしまい、受容体にくっついてしまうので、モルヒネと似た構造のものが血液脳関門を超え、神経細胞のシナプスのモルヒネ様物質の受容体でキャッチされると、中毒症状を引き起こし、ハイになったりイライラしたり、幻覚や妄想などを引き起こす事が起こしてしまいます。それだけではなく、神経伝達物質の発現を阻害してしまう事も分かっており、受容体から出てくる正常な神経伝達物質を阻害する為、心の安定に欠かせないセロトニンやGABAが出づらくなったり、あるいは神経を興奮させるノルアドレナリンを過剰に分泌させてしまったりします。そうすると記憶が曖昧になる、情緒が不安定になる、うつになる、興奮しやすくなるといった症状を引き起こします。

小麦や乳製品に依存性がある事が判明した背景には、ナルトレキソンやナロキソンといった麻薬拮抗薬があり、麻薬拮抗薬はその名の通り、麻薬中毒の患者さんに飲ませると麻薬作用を減弱させる作用があります。これを小麦依存者に飲ませた所、麻薬中毒者同様症状が軽減した事から判明した経緯があります。

パンや麺が大好きな患者さんがグルテンフリーやカゼインフリーに対して強い拒否反応がでてしまのはこういった事が原因にあり、いかに依存性の強さがあるかが分かるかと思います。また前回のブログでもお伝えしたグルテン不耐性の強い大人の方では消化器系のトラブルの訴えより疲労感を訴える方が多いとお伝えしました。

その理由に、グルテンカゼインの代謝産物は抗酸化物質であるグルタチオンの材料になるシステインの取り込みを阻害する事がわかっています。

グルテンカゼインにより腸粘膜に持続的な炎症が発生=活性酸素が大量につくられる→グルテンカゼインの代謝物質によりシステインを含むグルタチオンの抗酸化作用が阻害され活性酸素が除去されにくくなる、結果非常に疲れやすくなったり老化が進みやすくなってしまうという事になります。

そして腸の荒れ=炎症なのですが、グルタチオンが欠乏するとこの炎症も中々治まる事がなく、さらに小麦や乳製品を食べ続けていると中々腸内環境が改善しないのはこのような背景があります。

そして小麦はグルテンだけの問題ではなく、他にも悪さをするものがあります。

その一つにでんぷん質を分解するアミラーゼ、強力にタンパク質を分解してくれるトリプトシンを阻害するATIsという物質がグルテンとは別に小麦にはふくまれている事です。

アミラーゼの活性が阻害されると、でんぷんの分解が妨げられ糖質の吸収が阻害されます。糖質が吸収されないなら何だか体に良さそうに思えますが栄養の吸収阻害が起きているという事なのです、また強力にタンパク質を分解するトリプトシンは膵液に含まれる消化酵素です。トリプトシンの働きを阻害するという事は、身体の土台の材料であるタンパク質の吸収が悪くなる事に繋がり病態改善のスピードをがくっと落としてしまいます。

昔から小麦は食べられていたのに何故か、昔の小麦のグルテンは異種タンパクの特徴が弱く、毒性も少なかった、ところが最近の小麦は品種改良されATIsが多く含まれている。

ATIsを多く含む事のメリットは害虫に強くなるという事、F1種の大きな特徴は害虫に強く生産効率がいいという事です。遺伝子組み換えで増えている物質の代表がATIsといえます。

ATIsは腸内で分解されにくく、腸粘膜からのサイトカイン(免疫システムの細胞から分泌されるタンパク質)の放出を刺激します。さらにATIsの存在のもとで消化分解されたグルテン由来のグリアジンは、炎症誘発作用が強いタイプ、すなわち悪さをするタイプに変わってしまい腸粘膜は炎症を受けやすくなる事が分かっています。

小麦、乳製品を多く摂取しているお子さまに何故トラブルが多いのか、そしてお子さまも大人も含め、グルテンフリーとカゼインフリーをするとお腹の不調だけではなく精神症状まで改善が見られるのか点と点が少しつながったのではないかと思います。

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