溝口徹の栄養療法ブログ DOCTOR BLOG

2023.09.19

機能性低血糖症とは

先日、女優の中谷美紀さんがInstagramで投稿されていた「機能性低血糖症」。
少し前には元AKB48の岡田奈々さんも機能性低血糖症の診断を受けた事を告白されていました。
日本ではまだまだ認知されておらず、現在でも血糖値のトラブルは糖尿病のみと認識されているので、糖尿病でなければ糖代謝は問題ないとされています。

低血糖が身体にとって支障があることは日本でも知られていますが、低血糖になるのはインスリノーマという膵臓の腫瘍を伴う稀な病気か、インスリンやSU剤を用いた治療中以外には起こらないと考えられているのです。
機能性低血糖症は米国やカナダでは認知されており、糖尿病も含めた血糖値の調節障害をdysglycemia(血糖異常)と表現し、それが精神障害の主な原因であると認識されています。
日本では、機能性低血糖症という病態は、血糖値が下がりすぎる低血糖の状態が問題と認識されています。しかし、機能性低血糖症の問題は血糖値が急激に上昇したり低下したり、あるいは上昇すべき時間帯に上昇しないことも含み「機能性低血糖症」なのです。つまり、本来正常に変動すべき血糖値の変動が起こらないことを示す表現です。
その為、機能性低血糖症の症状は低血糖の症状だけではなく高血糖、急激な血糖値の変動のスピードに対しての症状が起きその症状はとても多様です。

主には、
・食直後、数時間後の強烈な眠気
・眼のチカチカや頭痛
・不安感や気分の落ち込み
・動悸や冷や汗、息苦しさなど
・イライラ、爆発的な怒り
・不眠、朝起きられない、だるさ
・思考力の低下や記憶力の低下 等々

この多様な症状の背景には急激な血糖変動が起こる事で起きる、低血糖と血糖値を元に戻そうとするアドレナリンやノルアドレナリンなどの自律神経に関わるホルモンの分泌が関わっている為です。
過去にこれまでのデータをまとめた記事があるのでよかったら読んでみて下さい。

◇「血糖変動と低血糖症状、自律神経症状は関連するのか?」◇
http://orthomolecule.jugem.jp/?day=20210304

血糖値のコントロールを正しく評価するためには中谷さんの投稿にもあるように、日中に繰り返し起こる血糖値スパイクを知ることです。
そのためには5時間の糖負荷検査をしたり、24時間持続で血糖値を測定できるリブレなどで知る事が出来ます。
低血糖の症状には不安や気分の落ち込み、イライラなど精神的な症状がある事からうつ症状と判断され抗うつ剤を処方される方も多くいらっしゃいます。
ですが機能性低血糖症や、多くの栄養障害で生じている抑うつ症状は、抗うつ剤だけではもちろん完治しません。
さらに原因に合っていない薬の服用により生じるイライラや高揚感のような変化を一種の躁状態として判断され今度は双極性障害と病名が変わります。
精神症状の根底には低血糖症が潜んでいるのです。

この機能性低血糖症では頻繁にエネルギー切れ状態が起こります。
症状を改善させるには、食事を頻回に分けてとっていく必要があり重度の方では1時間おきにとらなければだるさや疲労感、不安感などの低血糖の症状がでてしまう方もいらっしゃいます。食事の頻度は人によってかなり差があるので患者さんと試行錯誤しながらその方に合った食事のとり方を一緒に見つけていく必要があります。

クリニックに来て下さる患者さんのほとんどの方が疲労感、不眠、ささいな事を引きずるなどのお悩みを持っていますがやはり低血糖が根底にあります。
症状の違うお悩みでも基本の血糖コントロールはどの患者さんでも共通なのです。

この事についてPCで検索していたら参議院での議事録で機能性低血糖について議題としているものがありました議長への質問は、機能性低血糖と疑わしき患者さまには5時間糖負荷検査が必要である、治療には食事や運動のほかにサプリメントが有効である事、これらを保険適用にするべきという意見が上がってきている事などの内容でした。
それに対しての回答はみつける事ができませんでしたが、議題に上げてくれる議員さんがいる事に世の中の変化を感じる事が出来ました。

食事は美味しいだけになっていませんか?お腹いっぱいにするものになっていませんか?食事は体の材料を美味しく食べてお腹いっぱいにしましょう。

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