#不安と高いスポーツパフォーマンスは表裏一体
#大坂なおみさんが2018年からうつを抱えてきたことを公表しおやすみするというニュース、が話題となっています。トップテニスプレイヤーとして想像を絶するプレッシャーを乗り越え、古い世界を変えていく勇気とハートがある方だと思います。本来の自分を取り戻し、さらに活躍していただくためにも今はゆっくり休んでほしいです。
大阪なおみさんのスーパープレイを支える、アドレナリンを一気に出す能力は、不安感にも、集中力にもつながります。ご自身は「内向的で不安が強い」と言っていますが、「それはじつは本来の性格ではないかもしれません」と声を大にして伝えたい。
その素晴らしい特徴を活かすため、バランスを整えるための大きな武器のひとつは栄養です。
「うつ」は栄養面からみると、原因の一つとして鉄不足があります。大量に汗をかいて、激しいステップとかかとへの衝撃で赤血球がつぶされて壊れる。女性なら月経でも鉄が失われます。「女性アスリートの鉄のレベルを高く保つと劇的にパフォーマンスが向上する」と溝口先生がよく患者さんに話しています。先生自身もたくさん働いて元気で楽しく暮らすために鉄のレベルを高く保っているようです。
ストレスで栄養は大量に失われます。それに負けないように、栄養を積極的に取り入れていくと、とても早く元気になることがわかっているのです。
鉄が不足すると、本当に「うつ」になるのでしょうか?
実際にスタッフが(趣味で)実験してみましたので紹介します!
#鉄不足性格
スタッフは、栄養療法を続けて10年になります。とある生理の始まる1週間前の高温期(子宮内膜が厚くなる時期=体内の鉄が少なくなる時期)に、いつも飲んでいるヘム鉄をやめてみました。すると、数日後、一緒に住んでいる家族から「頼むからヘム鉄をのんでくれ!」といわれる状況になりました。
わたしは小さなころからポーっとした性格なのですが、顔色が悪くなり目の下にクマができて、10分ごとに「フー」とためいきがでて・・・急に性格が下記のように変わってしまったのです。
・底意地の悪い感じ。人が嫌がることを考え付く。
・どうしてこうしてくれないの?というイライラ。
・なんでもかんでも原因を分析追及しようとする。
・だれかにすがりたくなったり、ジャンクなものへの渇望、依存傾向が出る。
・他人や自分を責めるのが止められなくなる。
・細かいことを心配する。不安になる。
・自分が安心するために話、(LINE)を止められなくなる。
・「大事にしてもらっていない」と感じやすい。
・他人のちょっとした言葉使いなど、些細なことにとても敏感になる。
・死にたい。うつ状態。ネガティブになる。
・朝起きれない。
・ぼうっとして仕事の手際が悪い。
・いつもは簡単に登れるゆるい坂や階段がとてもしんどく感じる。
・衝動的になる。
小さなころの活発だった自分の性格が、初潮を迎えて小学校高学年、中学生のころには内気になったことを懐かしく思い出しました。月経、成長期(骨が伸びるのに鉄が必要です)と部活動(運動部なら汗から鉄を失います)が始まり、鉄の需要が大幅に増える時期です。不登校のみならず、荒れた中学校、非行、いじめにも栄養状態が関係しているのではないかと思います。
#鉄不足性格の仕組み
高温期には子宮内膜へ血流、栄養が行くので、脳や体に必要な鉄やタンパクが不足します。さらに生理前はホルモンの影響で低血糖になりやすくなっているので、自律神経が緊張し、鉄不足性格にさらに拍車がかかります。自分でも嫌な感じがして不快です。それを自分では止められないのでとてもつらい。そのため、原因や理由を探し、変えようとしたり、紛らわせようとします。
物理的にはいつも平気で歩いている坂がきつく感じ、精神的にはいつもは平気な人の言動がとてもきつく感じるようになります。つまり、鉄不足になるといつもと同じストレスがより深刻に感じられ過敏に反応するのです。
体内でエネルギーが低いと、ネガティブになったり、攻撃的になり、エネルギーが高いときはバランスがとれて楽観的になり、穏やかになるのは興味深い現象です。
自然界で野生動物は、鉄やミネラルが足りなくなると鉱床という岩の平らになったようなところを舐めに行くそうです。人間も、あまりに鉄不足がひどいと氷などの固いものを噛んだり、砂を食べたくなる人もいます。
わたしたち人間の場合は、やはり手っ取り早いのは、よく溝口先生が言うように、赤身肉です。鉄をうまく利用するために必要なビタミンB群や亜鉛、鉄と一緒に子宮内膜に集まるタンパク質を含むのは赤身肉だからです。脂溶性ビタミンDやA、EPA、DHAを含むシシャモやシラスなどのお魚丸ごとも良いです。
#鉄不足性格が穏やかになる方法
クリニックのスタッフは鉄不足の患者さんが来院したとたんにこの「鉄不足バイブレーション」を感じることがあります。部屋の端と端でも伝わってくるほど強力なバイブレーションですので、鉄不足であることがすぐにわかります。何かを獲って食べないといけない飢餓状態の熊のような状況で、目をランランと輝かせてアドレナリン全開の状況です。鉄不足性格は、日常生活での気分や周囲の方とのコミュニケーションに大きな影響を与えています。
ところが、血糖変動を起こさないように食事を変え、タンパク質を増やしてもらって、サプリメントでビタミンBやヘム鉄を飲んで1か月後に来院された同じ患者さんが、「まるで別人」のように穏やかになっているということは非常に多くあります。人間関係も楽になるようです。
食事でトライするなら、生理1週間前はいつもより赤身肉(上記の栄養素を含む)を意識して摂るとよいです。
誰でも鉄不足の症状がメンタルに出て鉄不足性格になるわけではありません。
スタッフのように、PMSでメンタルにでやすいという特徴をお持ちの方は、生理の1週間前、高温期には特に食事とヘム鉄の摂取に気を付けると心も体も楽になる可能性が高いのでおすすめです。
#自分を整えて能力を発揮するための武器としての栄養!
初心にもどって鉄不足の患者さんの気持ちがよ~く分かった1週間でした。
メンタルがどん底になっても、とりあえず自分の感覚を冷静に観察してみました。わかってもらえない不安、切り離される恐怖、実際にその危険が目の前にないときであっても、心の枠から感情があふれ出てしまいます。
鹿を一頭屠れるのではないかというほどの殺気を振りまいていたのでしょう・・・家族には短期間でも迷惑をかけたようです。私を含め鉄が足りなくなると鉄不足性格になる人は、名ハンターだった祖先の血を引いてこの時代に生きながらえているのかもしれません・・・。そんなときは、しっかり食べれば大丈夫です!
家族に文句を言われたので、スタッフも早速、赤身肉を食べ、ヘム鉄を摂って鉄不足性格は万事おさまり、殺気は消えました!
バランスを整えるための大きな武器のひとつは栄養。大坂なおみさんもこの機会にぜひ、糖質制限だけではなく、オーソモレキュラー栄養療法をやってみてほしいなあ~と思います。