オーソモレキュラー栄養療法の基礎を作ったカナダの精神科医であるエブラム・ホッファー先生は、癌の患者さんの不安やうつ症状などに対するメンタルサポートを精神科医として担当していました。
ところがホッファー先生が担当する患者さんは、カウンセリングや投薬だけではなく、ホッファー先生から食事やサプリメントの摂取も勧められていました。
そこで徐々にわかってきたのは、ホッファー先生がメンタルサポートを担当する患者さんは、その他の患者さんに比較して明らかに元気で長生きすることだったのです。
そのようなエピソードをから、癌の患者さんに対する栄養療法が応用されるようになったのです。
癌の患者さんの代謝は高回転の状態になっています。
つまりいろいろな栄養素の必要量が増えてしまっています。
タンパク質が不足すれば、筋肉が細くなり免疫がさがります。
がん細胞は食事とは無関係に増殖に必要な栄養素を消費するためです。
栄養の代謝が高回転になる原因に、がんに特有の慢性炎症があります。
この状態は、食欲を落としてしまうため、さらに栄養不足を進めることになるのです。
栄養療法では、癌の患者さんの慢性炎症の状態を改善するようω3系の脂肪酸を使ったり、ときには高濃度ビタミンCを点滴で補充することも行います。
一般的に行われている化学療法や放射線療法と併用することもでき、それらの治療の副作用を軽減することも知られています。
初回基本プラン |
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52,800円 初回基本プランに含まれるもの ・詳細な血液検査+栄養解析レポート ・診察料 5回分 |
※追加検査が発生する場合があります。追加検査の料金の詳細などは診療料金をご覧ください。
月々のサプリ代 |
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3万円~6万円 |
人間の身体は数十兆個の細胞から構成されています。これらの細胞は正常な状態では細胞数をほぼ一定に保つため、分裂・増殖をコントロールする制御機構が働いています。
ところが、まれに細胞の遺伝子変異によって正常なコントロールを受け付けなくなり、勝手に増殖し始める細胞集団が現れます。
「腫瘍」が正常組織との境界を超えて浸潤的(周りの組織に直接広がっていく)に増殖していく場合、あるいは転移を起こす場合(多くは両方)をがん(悪性腫瘍)といい、医学的には悪性新生物と呼ばれます。
一方、浸潤や移転をせず、周りの組織を押しのけるようにしてゆっくりと増える腫瘍を良性腫瘍といいます。
がんが発生する仕組みにはさまざまな説がありますが、「遺伝子に生じた何らかの変化が関与している」という説が定着しています。
遺伝子に変化をもたらす要因としては、以下のような因子が指摘されています。
身体を構成している細胞は、「分裂」と「増殖」、「アポトーシス(細胞の自然死)」を繰り返しています。
正常な状態では、細胞の成長と分裂は、身体が新しい細胞を必要とする場合に限って引き起こされるようにコントロールされています。つまり、細胞が老化などで死滅するとき、新しい細胞がそれに置き換わるのです。
ところが、特定の遺伝子に変異が起こると、この一連の流れに乱れが生じるようになります。身体が必要としていない場合にも細胞分裂を起こして増殖し、死滅すべき細胞が死滅しなくなってしまいます。
健康な人の場合でも毎日遺伝子の変異は起こっていますが、免疫力などによって制御されています。免疫力低下などで制御しきれなくなり、異常細胞が増殖していくと、がんとなります。
がんは発生組織の形態などから、おおよそ次のように分類されます。
さらに、がんは発生組織の細胞によって線がん、扁平上皮がんなどに分類されます。
1980年から日本の死亡原因の第一位はがんであり、心疾患や脳血管疾患よりも多くなっています。男女とも、がんの死亡数は増加し続けており、がん死亡数の増加の主な原因は人口の高齢化です。
厚生労働省「人口動態統計月報年計の概況」によると2019年にがんでの死亡数は37万6392人、全死亡数の27.3%となっています。
がんの死因のトップは男性が肺がん、女性が大腸がんです。
男女ともに膵臓がんが増加している一方で、男女ともに胃がんが減少傾向にあります。
女性では乳がんが年々増加しています。
いまや、日本人の2人に1人は一生のうちに何らかのがんにかかると言われており、とても身近な病気となっています。
がんの症状は、軽度のものから重度のものまでさまざまです。
がんは初めのうちは小さな細胞のかたまりで、特に症状はありません。がんが増殖して周辺の組織に入り込んだり押しのけたりしてそれらの組織に刺激や圧迫が加わります。
一般に刺激が起こると痛みが生じ、圧迫が生じると組織の正常な機能が妨げられます。
痛み
脳腫瘍による頭痛、食道がんによる嚥下痛(飲み込むときの痛み)など。
最初は軽い不快感になることが多いですが、がんが大きくなるにつれて悪化していき、後に痛みに変わって強さを増していくことがあります。痛みはがんが神経や他の組織を圧迫したり、それらに浸潤(直接広がる)したりすることで生じることがあります。
ただし、すべてのがんが激しい痛みを生じるわけではありません。また、痛みがなくてもがんが増殖していることもあります。
出血
がんが大きくなって周囲の組織に浸潤すると、近くの血管に食いこんで出血することがあります。がんの部位によって、出血の現れ方は異なります。
出血がわずかで発見できない場合や、検査でのみわかる場合があります。
進行したがんでは出血がより多く、大量となり命を脅かすこともあります。
血栓
特定のがんは、主に脚の静脈で過剰な血のかたまり(血栓)を作る物質を産生します。
脚の静脈にできた血栓は、血管から離れて肺まで移動することがあり、これにより死亡することもあります。
体重減少と疲労
一般的に、がんにかかると体重減少と疲労がみられ、これらはがんが進行するにつれて悪化することがあります。
食欲はあるにもかかわらず、体重が減少しているのに気づく場合もあります。
がんが進行した場合、激しい疲労を感じることが多くあり、貧血がひどくなると少し動いただけでも疲れを感じたり息切れしたりすることがあります。
リンパ節の腫れ
がんが体内に広がり始めるとき、まず近くのリンパ節に転移してリンパ節が腫れることがあります。
腫れたリンパ節は痛みがないのが通常で、触れると硬かったりゴムのような感触がしたりすることがあります。がんが進行している場合には周りの組織に癒着(くっついてしまうこと)して動かないこともあります。
がんが身体の一部にとどまっているか、広い範囲に広がっているか、その程度を表す方法として「病期(ステージ)」という指標を用います。
分類方法はがんの種類によって異なりますが、大きくは0(ゼロ)~Ⅳ期の5段階に分類されます。がんの部位によってはもう少し細かく分けることもあります。
がんのステージは、国際的な基準である「TNM分類」に沿って決められます。TMN分類は以下の3つの基準をもとにステージを決める方法です。
ステージ0のがんは、がん細胞が粘膜内にとどまっておりリンパ節に転移していない状態です。
ステージⅠのがんは、腫瘍が少し広がっているものの、筋肉層の範囲にとどまっており、リンパ節に転移していない状態です。
リンパ節に転移はしていないものの、筋肉層を超えて少し広がっている状態です。
または、腫瘍は広がっていないが、リンパ節への若干の転移がある場合も指します。
Ⅲ期は臓器の近くのリンパ節に転移が確認された状態です。
遠隔転移はないものの、局所(範囲が限られた場所)においては進行がんであり、手術ができる限界の状況であるケースも少なくありません。
Ⅳ期は離れた他の臓器への転移が確認された状態です。
ステージの数字が小さいほど、がんが狭い範囲にとどまっていて、治療効果が得られやすいとされています。
がんは0~Ⅰ期といった初期の段階で治療ができれば、5年生存率(がんと診断されてから5年後に生存している確率)が高くなりますが(乳がん95.7%、子宮頸部がん90.4%、直腸がん89.5%)、初期の頃は自覚症状がほとんどないため発見が遅れて病気が進んでしまうこともあります。
がんの疑いがあるときには、さまざまな検査が行われます。
検査の内容や回数は、疑いのあるがんの種類や状態によって一人ひとり異なります。
身体の状態や症状のほか、診断の手がかりを得るために、過去にかかった病気、現在かかっている他の病気、家族や血縁者も含めて詳しく聞き取りがされます。
また、生活習慣(喫煙や飲酒、職業など)についても聞かれます。
腫瘍マーカーの値などを調べます。腫瘍マーカーはがん細胞が死滅して血液中に出てくるタンパク質や糖の断片を調べる方法です。
がんになると正常細胞では作らない珍しいタンパク質や糖を作ることがあり、これはおおよそがんの大きさを反映していると考えられており、現在42種類ほどが知られています。
患者さんの負荷が比較的少なく、簡便な検査でありよく行われます。ただ、腫瘍がある程度の大きさにならなければ陽性にならず、腫瘍があっても必ず陽性になるとは限らないため、他の検査とともに診断が行われます。
X線を使って行います。体の周囲からX線をあてて体の中の吸収率の違いをコンピューターで処理し、体の断面を画像にします。
造影剤を使用することもあります。
強力な磁石と電波を使って、磁場を発生させて行います。
強力な磁場が発生している装置の中で電波を体にあて、体の内部の断面をさまざまな方向から画像にします。造影剤を使用することもあります。
ブドウ糖の放射線医薬品(FDG)を用いた核医学検査です。がん細胞はブドウ糖をエネルギー源として強く必要としているので、FDGは正常細胞よりがん細胞に多く取り込まれます。
そのため、正常組織より強く信号が出て画像に反映されます。
CT、MRIでは映らない1センチ程度の腫瘍を見つけることができますが、炎症がある部位にもFDGは集積するため診断には専門的知識が必要です。
また、脳や腎臓、尿管、膀胱、早期胃がんなどPET検査が診断に向かない疾患もあります。
体の表面に超音波プローブ(超音波の出る器械)をあて、体内の臓器からはね返ってくる超音波を画像として映し出します。
肝臓がんや乳がんなどでは血流を見るために造影剤を使用して超音波検査を行うこともあります。
主にがんの骨転移の有無、部位を調べる検査です。
骨転移がある部位に放射性医薬品が取り込まれ画像に反映されます。
放射性医薬品が炎症のある部分にも取り込まれやすいので、骨折や関節炎の診断にも使用されます。
※がんの早期発見を目指したがん検診について
市町村などの自治体が行うがん検診は、がんを早期発見し適切な治療を行うことで、がんで亡くなる人を減らすことを目的として行われ、症状がない人に定期的に行うものです。
わが国では、厚生労働省の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」で検診方法が定められています。
がんの治療は、がんの広がりや進行状況、症状など病気の現状を踏まえたうえで最も効果が高く身体への負担の少ない治療法を選択していきます。
がんに対して行われる一般的な治療は、手術療法、化学(薬物)療法、放射線療法で三大療法(標準治療)と呼ばれます。病巣の状態によって単独または組み合わせて行われます。
がんの病巣を外科的に切除して取り去る治療法です。
周辺組織やリンパ節に転移がある場合、一緒に切除します。
病巣を一気に切除できる利点がありますが、身体への負担が大きく、病巣が全身に広がると手術ができない場合もあります。
主に抗がん剤によってがん細胞を死滅させたり、増殖を抑えたりする治療法です。
抗がん剤の投与は、点滴や注射、内服で行います。
抗がん剤は血液を通して全身を巡るため、ごく小さな転移にも使用することができます。しかし、吐き気、倦怠感、脱毛などの副作用が起こることもあり、苦痛を和らげながら治療を続けることが必要です。
また、乳がん、子宮がん、甲状腺がん、前立腺がんなど、ホルモンが密接にかかわっているがんには比較的副作用の少ない「ホルモン療法(内分泌療法)」が行われることが多いですが、長期間治療を続ける必要があります。
がんの病巣部に放射線を照射して、がん細胞を死滅させる局所療法のことです。
放射線療法にはいくつかの種類があります。
技術の進歩により、病巣部に集中的に照射することが可能になってきましたが、照射部位に炎症症状などの副作用が起こったり、めまいなどの全身症状が現れることもあります。
三大療法(標準治療)以外の治療は代替療法や補完医療などと呼ばれます。
がん細胞が正常細胞に比べて熱に弱いという性質を利用した治療です。
子宮頸がん、直腸がん、膀胱がんなどに対して、標準治療と併用する形で行われています。
Biological Response Modifiers(生体応答調節)の略で、免疫賦活療法あるいは免疫機能補助療法と言われます。
免疫機能を調節して、がんに対する抵抗力を高める有効成分を投与します。
免疫反応を調節したり、免疫を担当する細胞を活性化または増やす働きをしたりするサイトカインという物質を薬として投与する治療です。
がんと闘う免疫力を高める効果が期待されています。
がん性胸膜炎、慢性骨髄性白血病などで有効性が報告されています。
代替医療には公的医療保険が適応されるものがありますが、日本では保険診療と自由診療を併用することができません。
こうした仕組みの例外として、公的医療保険が適応されない医療のうち、厚生労働大臣が定めた医療(先進医療)については、保険診療との併用を認める制度(先進医療制度)が作られました。
先進医療制度については、厚生労働省のホームページをご参照ください。
医療法人 回生會 理事長
みぞぐちクリニック 院長